2021年08月02日
北大、「生命の色素」合成の謎を世界初・解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 工学研究院の猪熊泰英准教授らの研究グループは、calix[3]pyrroleと呼ばれる環状化合物の合成に世界で初めて成功したと発表した。長年にわたるポルフィリン合成の謎を解明した。

 ヘムやクロロフィルに代表されるポルフィリン化合物は“ 生命の色素 ”とも呼ばれ,呼吸や光合成に欠かすことのできない化合物だが、この化合物は発見から100年以上にわたって研究されてきたにもかかわらず,未だに解明されていない謎があった。
 
 それは「ポルフィリンは4つのピロールから選択的に生成されるが、ピロールが3つのものは全く見つからない」ということだった。研究グループはこの謎を解く鍵とされてきたcalix[3]pyrroleの合成に挑戦し、このほど「カルボニルひも」と呼ばれる化合物を使って世界で初めて合成に成功した。

 3つのピロールから形成されるcalix[3]pyrroleは、環のサイズが小さいために非常に歪んだ構造をしていた。そのため、ポルフィリン合成に使われる酸性条件下でひずみエネルギーに誘起される特異な環拡大反応を示すことをつかんだ。
 
 驚くべきことに、酸性条件においてわずか10秒でピロールが6つからなる大きな環へと変化し、最終的には数時間かけてポルフィリンと同じ4つのピロールからなる環へと変遷することがわかった。
 
 このひずみ誘起環拡大反応こそが、3つのピロールで形成されるポルフィリン類縁体が見つからない理由だった。この発見は同時に、アニオン包接などの機能が知られる巨大マクロサイクルを合成するための環拡大反応という新たな手法の発見にもつながった。

 同研究成果は「Journal of the American Chemical Society」誌に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210729_pr2.pdf