2021年09月16日
名大・東大など、細胞外小胞の新しい捕捉方法開発
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 名古屋大学 大学院工学研究科の安井隆雄准教授らの研究グループは16日、東京大学、東京医科大学、大阪大学 などと共同で、細胞外小胞( Extracellular vesicles : EV )の新しい捕捉方法を開発し、この方法を使って捕捉したEVのmiRNA( マイクロRNA )や膜たんぱく質の発現量が、がん診断の新しい指標として利用可能であることを発見したと発表した。

 EVは疾病のバイオマーカーとして注目されており、由来する細胞によって内包物や大きさ、発現する膜たんぱく質の種類、脂質2重膜の組成が異なっている。
 
 今回研究グループは、EV表面の分子組成と電荷の相関性に着目したEV捕捉法を考案し、捕捉されるEVをバイオマーカーとして活用する方法を開発した。
 
 EV捕捉には、剣山のように配置したナノスケールの棒(ナノワイヤ)を用いた。その結果、表面が正に帯電するナノワイヤのEV捕捉性能が最も優れていることを見いだした。また、この方法で捕捉したEVについて、特定の2種類の膜たんぱく質の発現量比を調べたところ、がん細胞由来のEVと正常細胞由来のEVで発現量比が異なることが明らかとなった。
 
 この方法で捕捉するEV電荷とmiRNAやたんぱく質情報の相関解析を進展させることで、がんの早期検知が可能になると期待できる。

同研究の成果は、9月16日付オランダの学術雑誌「Biosensors and Bioelectronics」に掲載された。


■発表のポイント
 Extracellular vesicles(EV 直径30~2000nm )には、がんや病気に関連するmiRNAやたんぱく質が含まれるため、がんや病気のバイオマーカーとして利用が期待されている。

 研究グループは高機能、酸化亜鉛ナノワイヤの正電荷表面を使ってEVの電荷に基づく捕捉を達成し、EVの膜たんぱく質であるCD9、CD63、CD81、CD147の検出を達成した。また、大腸がん細胞由来のEVから得られた膜たんぱく質の発現量比(CD147/CD9)が、健康なボランティアの尿サンプルのEVから得られた膜たんぱく質の発現量と異なることを見いだした。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210916-2/pdf/20210916-2.pdf