2021年10月15日
北大、新しいウシ受精卵培養系の開発と機構解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院の川原 学准教授(農学研究院)らの研究グループは15日、東京農業大学と共同で、新規ウシ胚培養系を開発し、これまで不可能だった受精後10日目以降のウシ受精卵の培養構築に成功し、さらに受精後10日まで体外培養したウシ胚から正常に個体発生することを初めて証明したと発表した。

 今回の研究で、アガロースゲルを培養基質として用いた新規ウシ胚培養系を開発し、ウシ胚盤胞期以降の胚生存性が従来法に比べて平均生存日数が2.5日延長することを見出した。

 この「ゲル培養」により作出した胚では、将来胎盤となる栄養外胚葉に特有の遺伝子発現や形態的特徴が体外で再現されると同時に、従来判然としなかった内部細胞塊からの胚盤葉上層と原始内胚葉への分化が明瞭に観察され、 体内同様の発生過程を経ていることが確かめられた。

 さらに、ゲル培養胚の発生能力を調べるため、フィールドで飼育している雌ウシを受胚牛として受精卵移植したところ、着床し妊娠が継続され個体発生能力が確かめられた。体外環境で10日間培養したウシ胚からの個体作出は世界初事例となる。

 また、この培養法により、これまで不明瞭だったウシ胚の発生機構が調査できるようになった。新しいウシ改良増殖システムの展開につながることが期待される。

同研究の成果は9月27日公開の米国科学誌「The FASEB Journal」にオンライン公開された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/20211014_pr2.pdf