2021年10月19日
北大「白亜紀にはカマキリに似たゴキブリがいた」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院の伊庭靖弘准教授(理学研究院)らのグループは18日、約1億年前(白亜紀中ごろ)にもカマキリに似たゴキブリがいたと発表した。ミャンマーに生息していたゴキブリの仲間Huablattula hui(フアブラッツラ・フイ)の微小な感覚器官を詳細に解析した結果、明らかとなった。
 
 昆虫の感覚器官は微小ながらも非常に優れた情報処理能力を有しており、全動物種の70%を占める昆虫の大繁栄を支えてきた要因の一つと考えられている。昆虫を対象とした進化古生物学的研究を展開する上でも彼らの感覚器官は強力なツールになると期待できる。
 
 だが、昆虫感覚器官はその微小さ・脆さから、ほとんど化石として保存されないと、これまでは研究の重要性まで見過ごされてきた。

 今回、北大学院薄片技術室の中村晃輔技術専門職員と共同で開発した、新規の破壊的手法を適用した触角の解析から、本種が多くの現生ゴキブリに比べて視覚機能に優れており、明るく開けた生息環境に適応していたことが明らかとなった。また,触角上の性フェロモン受容器の特徴から、現生のカマキリに類似した異性間コミュニケーションをとっていた可能性も示唆された。
 
 本研究には、オスの化石ゴキブリ(フアブラッツラ・フイ)を1 個体含むミャンマー北部カチン州から産出した琥珀を用いた。化石標本を一眼レフカメラとマクロレンズで撮影した画像と,苫小牧市テクノセンターが持つX 線CT で撮影した三次元データから,複眼を構成する個眼の数を推定した。

 これらの結果は、白亜紀以前のゴキブリが現在よりも多様な生態的地位を占めていた可能性が高いこと、微小感覚器官の解析が化石昆虫の詳細な生活スタイルの復元に極めて有効であることを示している。

なお、同研究成果は9月28日公開の「The Science of Nature」誌にオンライン公開された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/20211018_pr3.pdf