2021年10月22日
農研機構・北大など「「雪腐病菌」を初特定
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:北海道大学

 農研機構は21日、北海道大学、八戸工業大学と共同で、実験植物のシロイヌナズナに感染する「雪腐病菌」を初めて特定し、雪腐病菌に対する植物の抵抗性を評価する実験系を開発したと発表した。雪腐病は、麦類や牧草を枯らす重要病害。

 この実験系によりこれまで不明だった雪腐病菌の感染に対して植物が抵抗する仕組みの解明が進んだ。この知見に基づいて今後、雪腐病抵抗性に優れたコムギやオオムギ、牧草等の品種開発が進むと期待される。

 冬季に作物が長期間積雪下におかれる北海道や北陸などでは、「雪腐病」が雪の下で多く発生する。
 雪腐病は、主にコムギやオオムギ、牧草などに観察され、春の雪解けとともに腐った葉っぱが顔を出す。
 防除するためには、農薬の散布が必要だが、散布時期の見極めが難しい。雪の下で起こる病気のため、感染の仕組みや植物がもつ抵抗性などの基礎的な現象の解明は進んでいない。

 そこで今回、抵抗性の仕組みを解明する第一歩として、実験植物であるシロイヌナズナに感染する雪腐病菌を特定し、シロイヌナズナを用いて雪腐病菌に対する植物の抵抗性を評価する実験を行った。開発した実験系を用いて、雪腐病菌に対する抵抗性が低温馴化により向上することを明らかにした。
 
 さらに、植物ホルモンのジャスモン酸は抵抗性を強化し、別の植物ホルモンのエチレンはそれを抑制する働きをすることが明らかになった。

 今後、さらに研究が進み雪腐病抵抗性をもつコムギやオオムギ、牧草等の品種育成が進展すると期待される。


<用語の解説>
◆雪腐病 :積雪下で蔓延する好冷性糸状菌(カビ)等による植物の病害の総称で、麦類や牧草を枯らす重要病害として知られている。