2021年11月16日
理研、コロナウイルス抗体「その場」で測定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 開拓研究本部の伊藤嘉浩主任研究員らは15日、指先などから採取した1滴の血液から複数の抗体の有無や量を一度に判定できる新しい検査法を開発したと発表した。判定にかかる時間はわずか30分ほど。2020年、アレルギー疾患の診断用として実用化され、21年新型コロナの迅速検査システムの開発に成功した。

伊藤主任研究員らが今回開発したのは、抗原(アレルゲンやウイルスなど)を基板に固定したマイクロアレイチップを用いて、抗体の種類や量を検査するシステム。血液などの患者の検体をマイクロアレイチップに載せて検査装置にかけると、わずか30分ほどで結果が出る。抗体があると発光し、光の強さで量も分かる。

多数の物質を基板に固定し検査するマイクロアレイ技術は1990年代に登場した。DNAの断片を固定したDNAマイクロアレイは実用化しており、がんゲノム医療で遺伝子変異を判定する遺伝子パネル検査に用いられている。しかし、種類によって形や性質が大きく異なるタンパク質を基板に固定するのは難しかった。

伊藤氏らは2003年、光に反応する高分子を利用した「何でも固定化法」を開発。光反応性高分子を塗布した基板上に物質を並べ、紫外線を当てると物質が固定されるという仕組みだ。タンパク質など、さまざまな生体分子のほか、細菌やウイルスも固定できる。塗布する光反応性高分子には、患者の血液などに含まれるタンパク質が吸着しない特性を持たせた。このため、ノイズの少ない正確な測定が可能になった。

<用語の解説>
■マイクロアレイとは :複数の標的分子を1枚のチップ上に微小スポットとして固定化したもので、固定化するものによって、DNAチップやプロテインチップとも呼ばれる。


関連ファイル
https://www.riken.jp/press/2021/20210903_2/