2021年12月23日
北大・「がんの転移メカニズム解明」に成果
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 大学院の西村紳一郎教授(先端生命科学研究院)らの研究チームは22日、がんの転移先はエクソソームの糖衣(糖鎖パターン)が決定することを発見したと発表した。がん細胞の糖衣(糖鎖パターン)をまるごと写し取り、ナノ微粒子に提示する方法を開発した。

 また研究チームは糖衣の違いによりマウス体内へ投与したナノ微粒子の転移する臓器指向性が異なることを発見した。同チームはこれまで大きな謎とされていた「がんの転移メカニズム」の解明と、そのユニークな機序に基づく、新たな抗がん治療薬開発を目的とする研究に2020年4月から取り組んできた。

 今回、抗接着性のナノソームと呼ばれる粒径20ナノメートル程度の超高性能ナノ微粒子を利用した研究により、がんの転移のしやすさや転移先(臓器・組織指向性)は、がん細胞が分泌する「エクソソーム」というナノサイズの細胞外微粒子の表面を覆う「糖衣(glycocalyx)」と呼ばれる糖鎖のパターンが決定していることを世界で初めて明らかにした。

 この結果から、糖鎖を用いた薬物送達システム(Drug Delivery System、 DDS)によってがんの転移を先回りして防ぐという、全く新しいタイプのがん治療薬の開発が期待できる。同研究成果は12月9日「Biomaterials」誌にオンライン掲載された。

<用語の解説>
・ナノソーム  : リン脂質単分子膜などで被覆された直径20~30 nmの機能性ナノ微粒子こと。
・エクソソーム : 細胞が分泌する30~50 nm程度の細胞外微粒子のこと。
・糖衣(glycocalyx)… 糖タンパク質や糖脂質に結合するたくさんの糖鎖分子全体が細胞やエクソソームなどの膜表面を覆っている様子のことを「糖衣」という。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/211222_pr.pdf