2022年01月04日
北大、南極沿岸の海洋環境をアザラシ観測で解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 国立極地研究所の國分亙彦助教と北海道大学の研究グループは昨年12月27日、南極・昭和基地でウェッデルアザラシに水温塩分記録計を取り付けた調査観測によって、同地域沿岸の海洋循環メカニズムを解明したと発表した。同地域では秋から冬にかけて外洋の海洋表層から暖かい海水(暖水)が南極大陸沿岸に流れ込んでいること、また、その暖水を利用することでアザラシが効率よく餌をとっていたことなどが分かった。今後、南極海沿岸の海洋循環のメカニズムと海洋生態系の解明につながると期待される。同観測は第58次南極地域観測の一環として実施された。

 南極沿岸は厚い氷のため船で海洋調査をすることが難しく、この海域の大型動物がどのような仕組みによって生息しているのかはよく分かっていなかった。

 研究チームは、南極・昭和基地周辺に生息するウェッデルアザラシにCTD タグという最新の水温塩分記録計を取り付け、これまで未知だった秋期から冬期の沿岸の海洋環境を計測した。このCTD タグは位置情報、塩分と水温を計測し、同時に潜水深度を記録して、そのデータを衛星通信で送信することができる。機器の重さは580gで、アザラシの体重(平均326kg)に比べて十分に軽いため動物への負荷は少なく、一定期間後、アザラシの体毛の抜け替わる時期には体毛と共に脱落する仕組みになっている。
 
 また、このウェッデルアザラシは最大で深さ904m、96分間も潜水した記録のある南極沿岸の代表的な大型動物のため、定着氷の張り出す大陸棚上の海底近くの深さまでの海洋環境データ収集が期待できる。
 
 さらに、アザラシの潜水深度の記録から、どれくらい効率的に餌をとっていたかを示す指標を計算し、海水のタイプが餌とり行動にどう影響していたかを分析したところ、低温低塩分の水と比べて、高温低塩分の水や高温高塩分の水でアザラシはより効率的に餌をとっていたことが明らかとなった。
 
 
ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/211227_pr.pdf