2022年01月25日
東北大「完熟トマトはなぜ あんなに赤いのか」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 野菜や果物が赤やオレンジなどに色付くのは、熟成過程でクロロフィルから生産されるカロテノイドと呼ばれる有機色素が形成する微粒子が原因で、鮮やかな色あいは種子運搬者の目に留まりやすくして生息範囲を広げる「生存戦略」の一環とされている。
 
 一般的な有機色素が芳香族を基本骨格とする剛直な分子構造を有するのに対して、カロテノイドはポリエン骨格に由来する柔軟性に富んだ分子構造を持っているのが大きな特徴で、これはカロテノイド分子が応力に応答して歪みやすく、その歪んだ形や動きに応じて分子が持つ特性も変化しやすいことを意味している。

 東北大学 多元物質科学研究所の鈴木龍樹助教、奈良先端科学技術大学院大学物 質創成科学領域の安原主馬准教授、海洋研究開発機構の出口茂生命理工学センター長らの研究グループは25日、カロテノイドの柔らかな分子構造に由来する「歪みやすさ」がその独特の色調を生み出していること、またカロテノイドの分子歪みが微粒子の光学物性(色調)に影響していることを初めて明らかにしたと発表した。
 
 今後、天然素材が持つ本来の色調を引き出した、鮮やかな着色技術や分子の歪みによって物性を制御可能な新規ナノ材料の開発などへの応用が期待される。
 同成果はアメリカ化学会の「The Journal of Physical Chemistry C」誌1月21日付にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆ポリエン :多数のエチレン結合―CH=CH―を分子内に持つ炭化水素群の総称
◆バイオミメティクス :生物の構造や機能から着想を得て、材料開発へと応用する技術


ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220125_02web_tomato.pdf