2022年02月07日
広島大、ツキノワグマ血清/ヒトの筋肉細胞に効果
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学院 医系科学研究科の宮﨑充功准教授(生理機能情報科学)と、北海道大学院 獣医学研究院の下鶴倫人准教授(獣医学研究院)らの研究グループはこのほど、冬眠期ツキノワグマ血清の添加が、ヒト骨格筋培養細胞のタンパク質分解系を抑制し、筋肉細胞に含まれる総タンパク質量の増加に貢献することを明らかにしたと発表した。

 骨格筋は身体重量の約40%を占め、力発揮やエネルギー代謝など、ヒトの身体機能を制御する重要な組織の1つだ。筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態を「サルコペニア」といい、加齢や不活動、骨格筋幹細胞数の減少など、様々な要因によって起こる。高齢者の転倒や寝たきりなどが罹患率上昇に直結するため、サルコペニアの発症予防はヒトの健康寿命を延ばす上で重要となる。

 ヒト骨格筋の場合、不活動状態に陥ると、筋タンパク質量は1日あたり0.5~1.0%の割合で減少し、サルコペニアの進行が加速される。しかし冬眠動物には、筋肉の大きさや筋力は冬眠前後で全く変化しない。多少変化があっても非常に軽微だ。一方で、たとえ冬眠動物であっても、夏季に筋活動量が制限されると筋肉量は大きく減少するとの報告もある。

 つまり、今回の研究結果は、長期間の不活動・栄養不良を経験してもなお筋肉が衰えないという冬眠動物の特徴を説明するもので、将来的には ヒトの寝たきり防止や効果的なリハビリテーション手法の開発につながると期待できる。同研究成果は1月26日付の米国 オンライン科学誌「PLOS ONE 」に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220204_pr3.pdf