2022年02月09日
京大など、前がん細胞が正常細胞を駆逐する仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 組織中に生じた前がん細胞は、周りの正常細胞に細胞死を誘導して領地を拡大していくことが知られている。この現象は「スーパーコンペティション」と呼ばれている。だが、このメカニズムやそのがん化における役割はよくわかっていなかった。ショウジョウバエにおいて、がん促進タンパク質Yorkie(ヒトではYAPと呼ばれる)が活性化した細胞は前がん細胞となり、スーパーコンペティションによって領地を拡大していくことが知られている。

 今回、京都大学の井垣達吏 生命科学研究科教授、名古屋大学の大澤志津江教授、東京理科大学の近藤周准教授らの研究グループは、このショウジョウバエモデルを用いてスーパーコンペティションのメカニズムを解析したと8日、発表した。
 
 その結果、前がん細胞はbantamと呼ばれるマイクロRNAの発現上昇を介してTORシグナルを活性化し、これによりタンパク質合成能を高めていることがわかった。また、これにより隣接する正常細胞にオートファジーが誘導され、細胞死が起こることがわかった。正常細胞でオートファジーを阻害すると細胞死が阻害されるだけでなく、前がん細胞の腫瘍化が抑制されたことから、スーパーコンペティションが腫瘍形成に重要な役割を果たしていることもわかった。

 今回明らかになったメカニズムに関わる分子群はヒトにも存在しているため、今後スーパーコンペティションに着目した新たながん治療法の開発につながる可能性が期待される。

 同研究成果は、2月7日付の国際学術誌「Current Biology」にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-01/20220207-shimakawa-ab935cbb3b466f5b732d2f6dbe2729aa.pdf