2022年03月17日
熊大など、抗凝固療法/腎機能と出血リスク変化確認
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:熊本大学

 熊本大学と宮崎大学、東北大学の研究グループは17日、抗凝固療法による腎機能と出血イベントの関係に着目して解析を行った結果、抗凝固療法の開始後、腎機能が保たれている症例では、一時的に上がった出血リスクは時間の経過とともに下がり、腎機能が低下した症例では、時間が経過しても出血リスクは高いままだったことを確認したと発表した。

 急激に高齢化が進む日本は、不整脈の一種である心房細動患者数は、100万人を超すといわれている。抗凝固薬の投与は、心房細動による血栓を防ぐ目的で行われるが、その反面、出血を生じることがある。出血の重症度はさまざまだが、脳出血などの重篤な場合を除き、投与の継続が望ましいとされている。だが、患者の一部には出血イベントを繰り返すこともあり、慎重な判断が求められる。

 これまでの臨床研究では、出血等のイベントが生じると以降の観察が中止されていたため、その後の状況を知ることはできなかった。

 今回研究では、出血イベントが発生した後も、主治医の判断で投薬を続け、観察を継続した。その結果、腎機能の状態による出血イベント発生リスクの差に違いがあることがわかった。腎機能が低下している場合の抗凝固薬による出血イベント発生リスクは、繰り返す出血を考慮した場合の解析では、腎機能の状態による出血リスクの差がさらに大きくなると推定されることが示された。出血イベントが生じた後も、多くの場合は抗凝固療法を続けることが望ましいが、その方針を患者と医師が共同して決める際の科学的根拠となることが期待される。

 また、抗凝固薬による出血のリスクは、腎機能が保たれている症例では時間の経過とともに下がっていくが、腎機能低下例では出血リスクは高いまま持続することが確認された。
 同研究論文はオンラインジャーナル「BMC Medicine」に2月25日に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220317_01web_afire.pdf