2022年04月27日
北大、「食べやすさ」の定量的評価法を開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 工学研究院の田坂裕司准教授らの研究グループは26日、食品の「食べやすさ」に定量的な基準を与える新たな評価法を開発したと発表した。

 高齢化社会に伴い、潜在的に嚥下障害を抱える患者数は 100 万人を超えると言われている。一方で、温かい食事の提供をはじめ,医療の現場は患者の Quality of Life 向上と安全性の担保の狭間で腐心している。問題として、提供する食品の「食べやすさ」を定量的(数値的)に評価できないことがある。

 食品の多くは、摂食の過程で剪断の強さ・変形の速さによって粘度が変化する。さらに、唾液に含まれるアミラーゼとの加水分解により、食物のかたちが変化するため、その正しい評価は困難だった。果肉や固形物を残す不均質な食塊に対しては、その流動物性を評価できる方法もなかった。

 今回研究グループは「回転式超音波レオメトリ」を採用した。試験対象の液体を満たした円筒容器を振動回転させ、生じる流れを超音波により計測し、流体力学の方程式を介して流動物性を評価する方法だ。この手法は、これまでにもフルーチェの流動物性評価などに用いられていたが、北大病院の協力で「食べやすさ」の評価方法を確立すべく、まずは誤嚥防止に用いられてきた嚥下補助食品から定量的評価を行った。

 研究グループは、3種類の嚥下補助食品について、アミラーゼを加えた計測により咀嚼・嚥下過程を模擬し、その計測結果を2つの数値で表して流動物性の時間変化を図にプロットする手法を考案した。これまで、経験的に知られていた補助食品の機能性が、初めて時間変化として定量的に示された。
 
 これらの成果は今後、「食べやすさ」を評価する新しい手法として、次世代の基準策定に用いられることが期待される。同研究成果は3月26日公開の「Journal of Texture Studies」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆レオメータ(レオメトリ): 粘性や弾性など,物質の変形や流動に関する物性を計測する機器(手法)をいう。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220426_pr.pdf