2022年05月17日
北大調査「高山植物がきれいなのは虫に花粉を運ばせるため」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院の工藤岳准教授(地球環境科学)はこのほど、「高山植物がきれいなのは虫に花粉を運ばせるためだった」とする調査結果を発表した。日本最大の高山生態系を有する北海道大雪山系で30年にわたり高山植物の生態を調べた結果、虫媒花植物の多くが他家受粉に特化していることを突きとめた。高山植物には、低地性植物と比べて他家受粉に特化した種が多いことを発見した。
 
 寒冷な高山環境では昆虫の活性が低いため、高山植物は十分な受粉サービスを受けられない。このため自家受粉によって子孫を残していると考えられてきた。ところが40種以上の高山植物を調べた結果、全体の85%の種は自殖能力を持たないことがわかった。このことは高山植物の繁殖システムを根本的に見直す必要性を示唆している。

 高山植物の多くは、ハエ・アブ類かマルハナバチに花粉媒介を頼っているが、両媒花グループで結実率の季節的傾向が異っていた。ハエ媒花植物では季節的な傾向が見られなかったのに対し、ハチ媒花植物の結実率は季節進行とともに顕著に増加していた。生育期前半に開花すると受粉がうまく行われず、結実が制限されていた一方で、働きバチが現れる生育期後半に開花すると、結実率は大きく高まった。
 
 ハチ媒花植物の種子生産はハチの季節性に強く依存しており、今後の気候変動で高山植物の開花時期が早まると、ハチと植物の共生関係が崩壊する可能性がある。
 同研究成果は5月9日公開の「Ecological Research」誌にオンライン掲載された。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220512_pr2.pdf