2022年05月18日
北大・世界初:神経回路で遠隔部位に炎症を生む分子発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループは18日、神経回路で遠隔部位に炎症を生む分子機構を世界で初めて発見したと発表した。関節リウマチなどの疾患治療への応用が期待される。

 複数の関節リウマチモデルを用いて、炎症性疾患で遠隔部位に左右対称な炎症病変を生じさせる分子機構を明らかにし、これを「遠隔炎症ゲートウェイ反射」と定義した。

 関節リウマチ、間質性肺炎、乾癬などの炎症性疾患では、遠隔部位に左右対称な炎症病変が形成され、神経系の関連が示唆されていたが、これまでその実態は全くの不明だった。研究グループは、新規のゲートウェイ反射が形成に関与していると考え、関節リウマチモデルマウスを用いて検証し、新規の分子機構である「遠隔炎症ゲートウェイ反射」を発見した。

 遠隔炎症ゲートウェイ反射では、関節リウマチモデルマウスの片側の足関節の炎症で生じるATPにより、まず感覚神経、続いて脊髄のプロエンケファリン陽性介在神経の順で活性化し、その後、それに伴って反対側の足関節に分布する感覚神経が活性化した。その結果,活性化した感覚神経から逆行性にATPが放出され、反対側の血管内皮細胞、線維芽細胞などでIL-6アンプが活性化されることで炎症が誘導された。

 遠隔炎症ゲートウェイ反射では、ATPが神経伝達物質かつ炎症増悪因子として作用することがわかった。これらの結果から、遠隔炎症ゲートウェイ反射の神経回路とATPは、関節リウマチ、間質性肺炎、乾癬など遠隔炎症を引き起こす炎症性疾患の治療標的となることが期待される。
同研究成果は5月17日「Journal of Experimental Medicine」誌にオンライン公開された。

<用語の解説>
◆ATPとは :すべての植物、動物および微生物の細胞内に存在するエネルギー分子。 ATPは、細胞の増殖、筋肉の収縮、植物の光合成、菌類の呼吸および酵母菌の発酵などの代謝過程にエネルギを供給するためにすべての生物が使用する化合物のこと。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220518_pr.pdf