2022年05月23日
名大、世界初・炭素による「メビウスの輪」合成成功
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 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI)の伊丹 健一郎教授は20日、自然科学研究機構分子科学研究所の瀬川 泰知 准教授らとの共同研究により、炭素のメビウスの輪「メビウスカーボンナノベルト」の世界初の合成に成功したと発表した。「カーボンナノベルト」に、さらにひねりが加わった最難関分子の合成に成功した。

 ナノメートルサイズの繰り返し構造をもつ炭素物質「ナノカーボン」を、原子レベルで精密に合成する方法が材料科学で求められており、その重要な一歩として、ナノカーボンの部分構造となる分子を合成する「分子ナノカーボン科学」の研究が近年盛んだ。
 
 しかし、これまでに合成された分子ナノカーボンは、リング状やベルト状といった幾何学的に単純な構造だった。理論化学的に予測されている複雑な幾何学構造をもつ未踏のナノカーボンを合成するには、より複雑で幾何学的な特徴をもった分子ナノカーボンを合成する新しい手法の開発が必要となる。

 伊丹教授らは今回、メビウスの輪の形状をもつ分子ナノカーボン「メビウスカーボンナノベルト」を合成することに成功した。ベルト状の分子ナノカーボン「カーボンナノベルト」に、さらにひねりが加わった構造の大きなひずみを定量的に解析し、有機合成化学的な合成を行った。
 
 合成したメビウスカーボンナノベルトを分析することにより、メビウスの輪がもつトポロジー(位相幾何学)に由来する特異な動的挙動や光学特性が明らかとなった。

 表と裏の区別がないことや、右ひねりと左ひねりの鏡像関係が生まれるなど、メビウスの輪がもつ幾何学的特徴を実験的に実証した。複雑な幾何学構造をもつ新たなナノカーボン材料の開発に道をひらく画期的な成果といえる。
 同研究成果は、5月20日付イギリス科学誌「Nature Synthesis」オンライン速報版に掲載された。