2022年05月24日
広島大、簡便・鮮明にウイルス観察、染色剤を開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学大学院先進理工系科学研究科の定金教授らのグループは24日、ウイルスの姿が簡便かつ鮮明に見える新しい電子顕微鏡用染色剤を開発したと発表した。従来のウラン系染色剤や非ウラン系染色剤よりも使い勝手に優れ、さまざまなウイルスの観察に利用できる。

 Preyssler 型という、リンとタングステンの化合物が、ウイルスを観察する際の電子顕微鏡用染色剤として優れていることを今回見出した。既存の染色剤に比べて調整時の手間が少なく、鮮明な電子顕微鏡像が得られる。

 ウイルスの観察にはふつう電子顕微鏡が用いられるが、細部まで観察するためには観察の前に重元素を含んだ試薬をウイルスの表面に付ける染色工程が必須となっている。染色剤として多く用いられている試薬は酢酸ウラニルというウランを含んだ化合物だが、核兵器への転用も可能なことからその購入や取り扱いは厳重に管理されている。

 定金教授らのグループは、ウランを含まない Preyssler 型の化合物が水溶液中で安定であることに着目して研究を進め、ウイルスの鮮明な電子顕微鏡像が簡便に得られることを見出した。
が、

今回は、Preyssler 型構造を持つ化合物が良い染色剤となることを突き止めたが、今後は別の構造の化合物も検討することで、より簡単に鮮明にウイルスの写真がとれる染色剤の開発を進める。Afterコロナ時代に発生する新しいウイルスに対しても、すぐに鮮明に姿かたちを明らかにできる染色剤を開発していく方針だ。