2022年05月26日
金沢大・北大「細胞がクラスターを作り動く仕組み解明」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 金沢大学ナノ生命科学研究所の奥田覚准教授と北海道大学電子科学研究所の佐藤勝彦准教授の共同研究グループは26日、立体組織中で細胞がクラスターを作りながら動く物理的な仕組みを解明したと発表した。

 人体を構成する細胞の一部は、自ら推進力を生み出すことで身体の組織中を移動することができる。しかし、これまでの研究は、培養皿上の平面的な移動や関連する遺伝子についての研究に限られており、立体組織中を細胞が動く仕組みは未解明のままだった。
 
 研究グループは今回、細胞が動く物理的な仕組みに着目し、独自の科学計算技術を開発することで立体組織中を細胞が動く仕組みを明らかにした。
 
 まず、「一つ一つの細胞で偏った界面張力が細胞や細胞塊(クラスター)の移動を引き起こす」という仮説を立てた。そして独自の科学計算技術を使ってコンピュータシミュレーションを行い、この仮説の妥当性を確かめた。さらに細胞の偏った界面張力は,細胞と周囲との界面に一方向的な流れを生じることで、細胞やクラスターが動くための推進力を生み出すことが分かった。加えてこのコンピュータシミュレーションによって、がん浸潤や胚発生にみられる複数の異なる動きのパターンが再現され、各パターンが生じる物理的な条件が特定された。

 これらの発見は、細胞の動きに対する物理的な理解の重要性を示しており、基礎的な生物学のみならず、がん疾患に対する新しい理解を提供し、次世代の治療薬の開発にも役立つと期待される。

 同研究成果は5月6日、米国科学誌「BiophysicalJournal」オンライン版に掲載された。