2022年06月08日
北大、腫瘍血管の酸化LDL/がんの転移促進を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 歯学研究院の樋田京子教授らの研究グループは7日、腫瘍血管内皮細胞における酸化低密度タンパク質(LDL/LOX-1)経路が、がん組織中へ好中球を誘引して転移促進的な環境を形成している可能性を示したと発表した。転移性がんにおける酸化LDL蓄積を解明した。

 がん転移の予防・制御は治療上重要な課題で、がんの転移には血管や免疫細胞などで構成されるがん微小環境が大きく影響しています。

 研究グループは高転移性がん組織内には酸化LDLが多く蓄積していることを見出した。そうしたがんでは酸化LDLの受容体であるLOX-1が血管内皮細胞に高発現しており、酸化LDL/LOX-1経路を介して好中球のがんへの浸潤促進、転移促進性の微小環境形成に寄与している可能性が示された。
 
 マウスの腫瘍モデルで、腫瘍血管内皮細胞のLOX-1阻害によりがん転移の抑制傾向が認められた。このことからLOX-1阻害は新たながん治療の標的となることが期待される。循環器疾患では酸化LDLと血管病態の関連が知られているが、今回研究によりがんの血管病態にも関与していることがわかった。
今後、がん転移の抑制方法の開発や診断マーカーの開発につながることが期待される。
なお、本研究成果は5月24日公開の「International Journal of Cancer」誌にオンライン掲載された。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220607_pr.pdf