2022年08月10日
北大、フッ素化含窒素複素環骨格の合成に成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 創成研究機構の林裕樹特任助教(化学反応創成研究拠点)らの研究グループは9日、スーパーコンピュータを駆使した量子化学計算によるインシリコスクリーニングを用い、新しい3成分反応の開発に成功したと発表した。JSTプロジェクトの一環。

 量子化学計算は、これまで主に既知の化学反応のメカニズム解析に用いられてきた。未知の化学反応に対して、あらかじめ反応が進行するかどうかの予測に用いることができれば、新規反応開発を促進することが期待できる。だが、これには競合する副反応を含む全ての反応経路を網羅的に算出する必要があり、通常の計算手法では困難だった。

 本研究では、林助教らの基幹技術である人工力誘起反応法(AFIR法)と、スーパーコンピュータを用いた量子化学計算によって3成分反応をスクリーニングした。その結果、計算によってジフルオロカルベンを用いる3成分反応の存在が示唆され、それを実験で具現化することに成功した。

 さらに開発した反応は、用いる原料によって反応が進行するかどうかを、AFIR法による計算で予測することができる。これによって、創薬研究で重宝されるフッ素化含窒素複素環を含む多様な分子骨格を供給することが可能となる。同反応開発スキームは、次世代型の化学反応創出技術として有機合成化学分野の発展に貢献することが期待される。
 本研究成果は8月9日公開の「Nature Synthesis」誌にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆インシリコスクリーニング :コンピュータを用いたシミュレーションによって現象を予測し、望みの性質を示す化合物を探索する技術。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220809_pr.pdf