2022年09月06日
京大、キャベツを強制開花させるホルモン量推定
【カテゴリー】:ファインケミカル
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 京都大学大学院 農学研究科の中﨑鉄也教授らの共同研究グループは6日、花成ホルモンであるフロリゲンの定量解析を通して、野菜の中でも花を咲かせにくい性質のキャベツを強制的に開花させるために必要なフロリゲンの量を推定し、接ぎ木による開花制御技術の実用化へ向けた重要な知見を得たと発表した。

 開花誘導された植物への接ぎ木を通してフロリゲンを移行させ、本来は開花しない条件下にある植物でも強制的に開花させられることは、古くから知られていた。だが、実際には接ぎ木による開花誘導が困難あるいは不安定な植物種も多く、実用化には至っていない。

 研究グループは今回、野菜の中でも花を咲かせにくい性質のキャベツが、特定のダイコン系統に接ぎ木された時にのみ開花する現象に着目した。フロリゲンの実体であるFLOWERING LOCUS T(FT)タンパク質を、新規に開発した抗体を用いて定量した結果、接ぎ木されたキャベツ穂木は少量のFTの蓄積では開花せず、一定量以上の蓄積を必要とすることが推察された。また穂木にFTが高蓄積するためには、ダイコン台木におけるFT遺伝子の高発現に加えて、葉の十分な発達も重要であることを実験的に示した。本研究の成果は、フロリゲンの量的な制御を通して、花を咲かせにくい植物の開花を誘導する技術の開発につながると期待される。
同研究成果は9月5日に、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆フロリゲン:植物において開花誘導条件下の葉で合成され、茎頂へと移行して花芽の形成を誘導するシグナル物質として提唱された植物ホルモン。花成ホルモンとも呼ばれる。FT タンパク質がその主要な構成要素であると考えられている。

ニュースリリース
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-08/220906_motoki-cc69e45c868124830568062e5373574d.pdf