2022年09月14日
九大、宮古島の「迷チョウ」ルーツを初解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院 比較社会文化研究院の小川浩太助教(生物多様性講座)は14日、本来の生息地から離れて宮古島で発見された「迷チョウ」のルーツを日本で初めて解明したと発表した。
 
 台風や季節風などの影響によって本来の生息地とは異なる場所で発見されるチョウは「迷チョウ」と呼ばれ、日本列島ではこれまでに100種以上の迷チョウが記録されている。迷チョウは生態系にも影響を与える可能性があるため、そのルーツ(原産地)を明らかにすることは生態学的に重要だった。
 
 小川助教は今回、迷チョウが中国大陸に生息するクジャクアゲハ(Papilio bianor)の原名亜種( ssp. bianor)であることを遺伝解析や形態解析によって突き止めた。

 同助教は、宮古島でカラスアゲハに似たチョウを発見・捕獲した。宮古島にはカラスアゲハの仲間は分布していないため、そのルーツを調べた。まずNCBI の遺伝子データバンクからメタデータを基にカラスアゲハ類14種(亜種)41個体分のND5遺伝子の配列データを判定・抽出した。これらのデータと宮古島で捕獲された個体の遺伝情報を比較し、宮古島の個体がクジャクアゲハであると同定した。
 
 続いて、国内随一の九州大学所蔵の昆虫標本コレクションを利用し、詳細な形態比較を行うことで、宮古島の個体がクジャクアゲハのなかでもどの亜種に該当するかを調べた。その結果、宮古島で採集された個体は中国大陸に産する原名亜種であること、つまり中国大陸から飛来しことを解明した。

 今回初めて科学的な根拠に基づく迷チョウのルーツが明らかになった。
 同研究成果は、日本鱗翅学会刊行の国際誌 Lepidoptera Scienceに2022年9月9日に掲載された。