2022年09月26日
北大、ラッサウイルスの増殖を抑える化合物を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 人獣共通感染症国際共同研究所の澤 洋文教授らの研究グループは22日、インフルエンザウイルス阻害剤ライブラリーの中から、ブニヤウイルスに対して強力な抗ウイルス活性を有する化合物を発見したと発表した。

 ラッサウイルス(LASV)を含む多くの出血熱ウイルスは西アフリカに多くみられる。動物からヒトに感染する人獣共通感染症で、近年、局所的なヒトでの大流行を繰り返している。これまでにワクチンや治療薬の開発研究は行われてきたが、まだ有効な治療法は確立されていない。

 今回、研究グループは多種多様な病原性ウイルスに対する化合物スクリーニング系を構築し、広域なウイルスに対して抗ウイルス活性を有する化合物のスクリーニングを実施した。

 その結果、インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ(CEN)阻害薬の中から、LASVを含む複数のウイルスに対して強力な抗ウイルス活性を示す化合物を同定した。ブニヤウイルスは、インフルエンザウイルスと同様にCENを有しており、薬剤escapeウイルスの解析から、本化合物はブニヤウイルスのCEN活性中心に結合することで酵素活性を阻害することが示唆された。
 
 今回、ウイルス感染実験の結果から、本化合物は細胞内ウイルスRNA複製を阻害することで、強力なウイルス増殖阻害活性を示すことを見出した。ブニヤウイルス感染マウスモデルを用いた実験により、本化合物が感染動物に対して症状改善(致死抑制効果)を示すことが確認された。BSL4施設を持つ米国テキサス大学との共同研究によってもLASVに対して抗ウイルス効果を有することが確認できた。

 今回、ヒトに重篤な疾患を引き起こすLASVを含むブニヤウイルス属の幅広いウイルスに対して、本化合物が強力な抗ウイルス活性を有することを見出した。今後、新たな治療薬の開発につながることが期待される。

 同成果は8月29日付のProceedings of the National Academy of Sciences of the USA(PNAS)誌にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆ブニヤウイルス :ラッサウイルス、南米出血熱ウイルス等が含まれるウイルス属の総称。
◆ラッサウイルス :アフリカで流行中のウイルス性出血熱の原因ウイルス。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220922_pr2.pdf