2022年10月18日
九大、電子1個の精度で触媒ナノ粒子の電荷量計測
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院 工学研究院の村上恭和教授らの研究グループは18日、日立製作所、明石工業高等専門学校などと共同で、最先端の電子顕微鏡技術と情報科学的手法を融合する独自の研究戦略により、電子線ホログラフィーの位相計測精度を目的通り1桁向上させ、この技術を活かして、触媒ナノ粒子の電荷量を「電子1個の精度で数える」という、従来技術では達成できなかった未踏の計測に成功したと発表した。
 
 化学反応をさまざまに促す「触媒」は、地球規模の問題解決に貢献する重要な材料で、この触媒の性質を明らかにするための新技術として、物質の電位分布を観察できる「電子線ホログラフィー」が重要視されている。
 
 だが、触媒ナノ粒子が示すごく微弱な電位分布や電荷量を計測するためには、電子線ホログラフィーの位相計測精度を従来よりも1桁高めるという、技術上の大きな飛躍が必要だった。
 
 村上教授らは、化学反応に寄与する触媒電位の空間分布を観察することで、酸化チタン(TiO2)に担持(付着)した白金(Pt)ナノ粒子が、接合界面の素性によって正にも負にも帯電し得ることを明らかにした。さらに、電荷量がPtナノ粒子の結晶の歪み具合にも影響を受けることなど、触媒の研究開発にとって重要な知見を得た。
 
 今回の研究で得た超高感度の電子線ホログラフィーによって、今後、地球環境問題の解決に役立つ触媒の開発が加速されることが期待される。
 同研究成果は22年10月14日、米国科学誌「Science」オンライン版で公開された。

<用語の解説>
◆電子線ホログラフィー :
透過電子顕微鏡法(TEM)の一種。通常のTEMは、試料の形状、大きさ、結晶方位などの構造的な情報を与える。これに対して電子線ホログラフィーは、試料を透過する電子の位相の解析を通して、その根源となる静電ポテンシャルや磁束密度など、電場・磁場に関わる情報を与える。

研究内容の詳細
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/49783/22_1014_01.pdf