2022年11月24日
北大、腸内細菌叢による好中球恒常性維持機構解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授らの研究グループは22日、造血幹細胞移植や化学療法後の好中球減少時に、反応性好中球造血によって好中球数が回復するメカニズムに、腸内細菌叢が重要な役割を果たすことを、マウスモデルを用いて発見したと発表した。

 好中球減少が遷延すると、T細胞からのインターロイキン17A(IL-17A)産生が生じ、さらなる顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)の産生を促進し、骨髄での反応性好中球造血を刺激して好中球回復を促進することが分かった。このT細胞の反応や反応性好中球造血は、腸内殺菌を行うと抑制された。

 好中球減少時の腸内細菌叢を、16S rRNA遺伝子シーケンスにより検討したところ、好中球減少が遷延すると腸内細菌叢が変化することが判明した。この好中球減少によって誘導された腸内細菌叢は、別の好中球減少マウスに糞便移植の形で移植すると、定常状態の腸内細菌叢よりも、IL-17Aの産生や反応性好中球造血を効率よく刺激できることが分かった。

この結果から、化学療法や造血幹細胞移植後に、好中球造血を促進する菌を保つ抗生剤の使用法や、好中球造血を刺激するプロバイオティクスや菌叢移植法の開発につながることが期待される。
同本研究成果は11月22日公開の米国科学アカデミー紀要に掲載された。

<用語の解説>
◆反応性好中球造血 : 好中球減少が生じると、骨髄での好中球造血が著明に亢進することが知られており、反応性好中球造血と呼ばれる。細菌感染における緊急造血と異なり、メカニズムは未だ十分に解明されていない。

発表の詳細(プレスリリース)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221122_pr3.pdf