2023年01月12日
北大、1次元繊維状物質に大量のイオン導入成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学の藤岡正弥助教(電子科学研究所)らの研究グループは11日、九州工業大学、山梨大学と共同で、1次元状の結晶構造を有するZrTe3に、高濃度にAgイオンを導入することに初めて成功したと発表した。
 
 このようなイオン導入は、Liイオン電池等の電極反応に代表され、主に2次元層状物質で研究が進められている。2次元層状物質は、層間にイオンが収容されるため、イオン導入が進むにつれて層間が広がった構造に変化する。一方で、MX3の組成式で表される一次元繊維状物質は、繊維の周囲にイオンが収容されると考えられているが、イオン導入に伴う構造変化は未解明のままだった。

 研究グループは今回、結晶にダメージを与えない固相間のイオン拡散を利用し、Agイオンを大量に導入したAgxZrTe3の合成に成功した。

 この擬アモルファス相では、Agイオン濃度が連続的に変化することで、超伝導、金属、半導体へと電子物性が大きく変化することが分かった。さらに擬アモルファス相に由来する低い熱伝導率やAgイオンの高速拡散等、輸送特性における種々の機能性が期待される。また、第一原理計算によりAgイオン間の引力相互作用が擬アモルファス状態形成の起源となっていることが示唆され、このような状態はAgとZrTe3に限らず、様々なMX3と導入イオン種の組み合わせに応じて実現すると考えられる。今後、擬アモルファス相を有する様々な物質系で新奇な機能性の発現が期待される。

 同研究成果は、2023年1月7日公開の「Advanced Functional Materials」誌にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230111_pr.pdf