2023年01月13日
北大、エルニーニョがメコンデルタに与える影響 解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 理学研究院の渡邊剛講師、九州大学大学院 理学研究院の山崎敦子助教らの研究グループは、世界有数の農業地帯であるメコンデルタの降水量とエルニーニョ南方振動(ENSO)との関係を過去81年間にさかのぼって調べ、解明したと発表した。

 メコンデルタは世界有数の農業地帯として、世界のコメ供給を支える重要な地域。しかし近年は、多発する洪水や干ばつによる農業生産への影響が危惧されている。

 研究グループは、2006年にメコンデルタ沖合のベトナム・コンダオ島で造礁サンゴの柱状試料を掘削した。
 サンゴ骨格に含まれる酸素安定同位体比とSr/Ca比(ストロンチウム/カルシウム比)を分析し、1924~2006年の塩分変動を復元することで、同地域の降水量の観測記録を補った。

 その結果、同地域では、雨季には“洪水を伴うような多雨”と、“干ばつを伴うような少雨”の2つのパターンがあることがわかった。また、洪水を伴うような多雨の雨季は近年、頻発する傾向にある一方で、干ばつを伴うような少雨の雨季の発生頻度には大きな変動が見られないことが明らかとなった。
 
 さらに、過去81年間にわたってメコンデルタの雨季の降水量は、中央太平洋で発生するエルニーニョ現象の影響を強く受けているものの、その影響は2パターンの雨季それぞれで異なることが示唆された。
 
 本研究結果は、ENSOがメコンデルタにもたらす水文学的な影響を理解し、将来における洪水・干ばつ等のリスクを推測するための一助となることが期待される。
なお、同研究成果は2022年12月7日に「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。

◆水文学(すいもんがく) :水環境や水の利用・保全などを考える学問分野。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221208_pr.pdf