2023年01月13日
京大、なぜ免疫系は無害なウイルスを排除しないか
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学 生命科学研究科の本田直樹 特命教授らの研究グループは12日、免疫系が体内への様々な侵入者(抗原)に対して、有害か無害かを判断し、適切な免疫応答を起こす数理モデルを開発したと発表した。

 免疫系は自己と非自己を判別できることは広く知られている。だが、非自己の抗原には、有害なウイルスや細菌だけでなく、無害な花粉や食べ物なども含まれていて、どのように免疫系がそれらを識別し、適切な強さの応答を誘導しているのかは免疫学における大きな謎だった。
 
 今回研究は、「予測符号化」という機械学習の概念に基づき、「免疫系が抗原のリスクを予測し、その予測と実際の観測との誤差に基づいて免疫記憶がアップデートされる」という新しい仮説を提唱した。
 
 この数理モデルにより、抗原の量やそれが入ってくる速度に応じて免疫応答の強さが決まることを示した。また、花粉症などのアレルギーの発症や、アレルゲン免疫療法の効果を再現し、モデルの妥当性を示した。
 
 今回提唱されたモデルは、「抗原に応じた免疫応答の誘導メカニズム」という免疫学における根本的な謎の解明に貢献する。また、アレルギーや腸炎などの免疫系の誤作動によって引き起こされる疾患の、数理モデルを用いた統一的理解に発展することが期待される。
 本研究成果は、2022年12月7日に「iScience誌」に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-01/230112_honda-e4a482aaa3ab26e274a5c8fb3cdc43fe.pdf