2023年01月16日
京大「高齢者のT細胞応答 立ち上がりが遅く収束早い」
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 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の城憲秀 助教らの研究グループはこのほど、新型コロナウイルスワクチンに対する免疫応答の個人差・年齢差について、「高齢者はワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅く、収束は早い 」などとする解析結果を発表した。
 
 一般に歳をとるにつれ免疫機能が低下することは知られているが(免疫老化)、ウイルスやがんに対する免疫応答の中心を担うT細胞が生体内で刺激を受けた際の応答性が、加齢によってどのように、どの程度変化するのかはよく分かっていなかった。
 
 研究グループは成人107名(男性43人、女性64人)、高齢者109人(男性56人、女性53人)を対象に、新型コロナウイルスワクチンに対する免疫応答の個人差・年齢差について検討し、特に加齢の影響を受けやすいとされるT細胞に着目して解析を行った。
 
■その結果、次のことが明らかとなった。

(1)高齢者では、ワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅く、収束は早い傾向がある。
(2)ヘルパーT細胞応答の立ち上がりが遅い人では、抗体価、キラーT細胞注2)の活性化、および副反応の頻度も低い傾向がある。
(3)高齢者のへルパーT細胞はPD-1を高レベルで発現し、キラーT細胞の誘導と負の相関を示したことから、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。
(4)ワクチン接種後の免疫応答は、年齢差だけでなく個人差が顕著だった。個人差では最大値と最小値は両群とも約100倍もの違いがあった。
同研究成果は2023年1月12日(英国時間)に「Nature Aging」で公開された。

( 用語の解説 ) 
◆ヘルパーT細胞 :主にサイトカインを産生することで他の免疫細胞の機能を助けるT細胞。ワクチン応答では、抗体産生を促したり、キラーT細胞を活性化したりする。

ニュースリリース
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/230113-100000.html