2023年01月30日
東北大、超硫黄分子種による抗酸化作用を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 生物の体内に取り込まれた酸素の一部は、反応性の高い酸素の“活性酸素種”となることが知られている。活性酸素種の中でも反応性が高いフリーラジカルは、脂質など様々な生体成分を酸化する。脂質の酸化は、動脈硬化や神経変性疾患などさまざまな疾患の原因となるため、適切に抑制する必要がある。

 東北大学大学院 薬学研究科の斎藤芳郎教授らの共同研究グループはこのほど、超硫黄分子種がフリーラジカルを消去し、脂質の酸化を抑制できることを発見した。この作用は、連結する硫黄数の増加に伴って増強される。これらのことから、超硫黄分子種は生体内でフリーラジカルを消去し、脂質酸化による酸化ストレスを抑制すると考えられる。

 超硫黄分子種は、硫黄が連なった構造を持つ化合物の総称で、生体内に豊富に存在し、多様な生理機能を持っている。超硫黄分子種は、過剰な活性酸素種によって誘導される酸化ストレスに対して防御的に働くことが知られているが、フリーラジカルや脂質酸化との関係はこれまで不明だった。

 今回研究によって、これまで不明瞭だった超硫黄分子種によるフリーラジカル消去作用および脂質酸化抑制効果を定量的に解明された。超硫黄分子種による抗酸化作用を考える上で基盤となる知見となる。今後、超硫黄分子種を増加させることで酸化ストレスに起因する疾患の予防へとつながることが期待される。

◆フリーラジカル
 不対電子を持つ分子種で、特に酸素由来のフリーラジカルとしてスーパーオキサイド、ヒドロキシラジカルによる酸化ストレスが研究されてきた。生体内において、上述のラジカル種の他に脂溶性の高い脂質ラジカルや脂質ペルオキシラジカルが存在しており、これらによる連鎖的な脂質酸化反応によって惹起される細胞死