2023年02月20日
南極の藻類が赤外線で光合成する仕組み解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東北大学

植物や藻類は一般的に、太陽光にふくまれる光の中でも可視光しか光合成に利用することができない。南極に繁殖するある藻類は赤外線を光合成に利用することができるが、これまでその仕組みはわかっていなかった。

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの小杉 真貴子特任研究員、高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所の川崎 政人 准教授、東北大学・柴田穣 准教授らの研究チームは16日、赤外線の一部である遠赤色光(700~800 nm)で光合成を行うことが知られる「緑藻ナンキョクカワノリ」で、遠赤色光を吸収するための光捕集アンテナタンパク質(Pc-frLHC)を同定し、KEKにあるクライオ電子顕微鏡による単粒子解析によって分子の立体構造を明らかにしたと発表した。

その藻類が赤外線で光合成するタンパク質の構造を、クライオ電子顕微鏡を使って明らかにした。

Pc-frLHCは11個の同じタンパク質がリング状に結合した大きな複合体を作っていた。1つのタンパク質にそれぞれ11個のクロロフィルが結合しており、このうちの5つのクロロフィルが遠赤色光の吸収に関わる特別なクロロフィルであると示唆された。

分光学的な解析から、このクロロフィルに吸収された遠赤色光のエネルギーの一部がPc-frLHC内で可視光と同等のエネルギーに変換され光合成に利用されていることを示した。

太陽系外で見つかっている惑星の多くは、太陽より温度が低く主に赤外線を出す恒星の周りにあり、赤外線を光合成に利用する生命の可能性が示唆されている。今回の成果は、そうした生命の可能性を探る手掛かりになると期待される。
この結果は、英国の科学誌「Nature Communications」2023年2月15日付に掲載された。

ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press20230216_01web_antarctic.pdf