2023年02月27日
東レの「抗血栓性ポリマーと人工腎臓」高分子学会賞
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ

 東レは27日、東レリサーチセンター(TRC=東京都中央区、川村 邦昭 社長)とともに、「水の運動性に着目した抗血栓性ポリマーの設計と人工腎臓の工業化」で(公社) 高分子学会「2022年度高分子学会賞(技術部門)」を受賞したと発表した。

 同社のコア技術であるナノテクノロジーと計算化学、TRCの分析技術を融合し、水の運動性に着目した新しい抗血栓性ポリマーの設計技術を確立した。また、同技術により、抗血栓性を向上させた人工腎臓の製品化に成功し、慢性および急性腎不全患者の生活の質(QOL)の向上に貢献していることが評価された。東レは今後、同技術を生かし新たな医療機器の創出を目指す。

 血液には異物と接触すると凝固する特徴があるため、多くの医療機器には、血液が凝固しにくい抗血栓性が求められる。東レは、ポリマーと相互作用する水の運動性が抗血栓性に関与するという独自仮説を立て、分子動力学シミュレーションやTRCによる中性子準弾性散乱などの先端分析を活用することで、新しい抗血栓性ポリマーの設計指針を確立した。

 医療機器の中でも、腎不全患者の透析治療に用いられる人工腎臓は、特に抗血栓性が要求される。人工腎臓は、円筒状のケースに中空糸膜が約1万本内蔵されており、中空糸膜を介して、患者の血液から老廃物を除去する。東レは、人工腎臓では使用実績のなかった新規ポリマーを世界で初めて採用し、慢性および急性腎不全用の各種人工腎臓の製品化に成功した。従来品に比べ、膜寿命の延長や、治療後に人工腎臓に血液が残る現象(残血)の抑制なども報告され、患者QOLの向上に貢献している。

ニュースリリース
https://www.toray.co.jp/news/details/20230224152524.html