2023年03月24日
北大、温度・圧力・電圧を同時制御 合成手法開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 電子科学研究所の藤岡正弥助教らの研究グループは23日、イオン拡散技術と高圧印加技術を融合することで、新たな合成手法の開発に成功したと発表した。

 準安定な物質は単純な焼結では合成が難しく、新たな技術の開発が求められている。研究グループは、拡散現象を利用して、固体中から特定の元素だけを除去・導入・交換するような反応を促すことで、準安定状態の実現を目指した。
 
 拡散を利用して物質の組成を変える場合、電子伝導性の物質は内部に電界がかからないため、拡散の駆動力として一般に用いられる電圧印加が利用できない。また、拡散が進行する物質の体積も同時に変化してしまい、特に多結晶を構成する結晶子は、組成変化に応じて膨張・伸縮し、粒子間の界面に生じるひずみやクラック等が、接触不良の原因となり、拡散反応を妨げる。イオンや電子の本質的な輸送特性の評価を困難にするなどの課題もあった。
 
 今回、化学ポテンシャルを利用したイオン拡散技術と、高圧印加技術の融合した高圧拡散制御法により、これらの課題をクリアした。

 構造の骨格を保持したまま、Na濃度を減少させたことで、電子伝導特性を大きく変調し、AlB14の電気抵抗率が室温で105倍以上減少することを見出した。この技術は固体中の結合状態が大きく異なる物資系に対して有効で、今後は計算科学の活用により、有望な物質系が選定できると期待される。

 同研究成果は3月21日付の「Chemistry of materials」誌に掲載された。