2023年04月11日
リチウム空気電池を長寿命化する新素材発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 リチウム空気電池は、現在のリチウムイオン電池の数倍以上のエネルギー密度の達成が見込まれる次世代蓄電池だが、劣化が激しく繰り返し充放電できない課題があった。東北大学、信州大学、岡山大学、大阪大学などの研究チームはこのほど、リチウム空気電池を長寿命化させるカーボン新素材の正極を見出したと発表した。

 リチウム空気電池は正極にカーボン材料、負極にはリチウム金属が使用され、正極への過酸化リチウムの析出・分解により充放電が行われる。これまでは正極にカーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭等の多くの材料が検討されてきたが、いずれも劣化しやすく、繰り返し充放電できないことが課題だった。

 今回、東北大が世界初開発したカーボン新素材「グラフェンメソスポンジ(GMS)」を正極に使うことで、これまでのカーボン正極材料の容量を大きく上回る6700 mAh/g、従来比6倍以上の充放電サイクル寿命を達成した。さらに、GMSのナノ構造を先端の分析手法、数学的解析、理論計算を用いて緻密に解析することで、高性能と高耐久性を両立するための材料設計指針を確立した。
 
 GMS の高特性を産むトポロジー欠陥構造を理論と実験の両輪で解明した。将来、リチウム空気電池の実用化につながると期待される。同成果は科学誌「Advanced Science」(23年4月10日付)に掲載された。

<用語の解説>
◆リチウム空気電池 :負極がリチウム金属、正極が酸素(O2)の二次電池を、単に「リチウム空気電池」と表記する。
◆グラフェンメソスポンジ(GMS):ナノ細孔を取り囲む細孔壁がグラフェンシート約1層で形成される多孔性のカーボン材料。

ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_0410press_02web_carbon.pdf