2023年05月11日
九大、空気プラズマで長尺細管内を高速滅菌
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院 総合理工学研究院の林信哉教授らの研究グループは10日、空気(大気)を原料とするプラズマを用いてカテーテルなどの長尺細管内を高速かつ安価に滅菌する方法を開発したと発表した。

 医療器材には、使用前に滅菌が必要で、現在は主に高圧水蒸気滅菌法や低温ガス滅菌法が用いられている。近年はプラスティックやゴムなど、非耐熱性素材で作られた医療器材が増えているため、低温滅菌が可能な酸化エチレンガス滅菌法が主流となっている。
 
 だが長尺細管、カテーテルの場合は、管内に導入できるガスの量が限られ、残留した滅菌ガスを除去するのに長時間が必要となり、ガス滅菌法でも十分な滅菌は困難とされてきた。

 今回、研究グループは、カテーテルの一端に装着可能な小型安価な空気プラズマ装置を製作し、内径2 mm、長さ100 cmのカテーテル内の滅菌に、従前の薬剤法よりも短い時間(1~2時間程度)で成功した。カテーテル自体へのダメージも僅少で、同方法の素材適合性も確認した。
 
 また,滅菌に寄与するプラズマ中の粒子種が活性な窒素酸化物であることを特定し、それによる菌の不活化メカニズムを明らかにした。今後はさらに医療器材だけでなく、農産物の殺菌や宇宙探査機に付着した微生物の殺菌にも応用できるよう研究を進める。
 本研究成果は4月28日付け英国科学雑誌「Scientific Reports誌」に掲載された。

<用語の解説>
◆プラズマ : 通常のガスに電気や熱のエネルギーを加えることにより、正の電荷を持つイオンと負の電荷を持つ電子とに電離した高エネルギー状態のガス。プラズマ中の高エネルギー粒子を用いてこれまで起こせなかったような化学反応を生じさせることができる。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52643/23_0510_02.pdf