2023年05月12日
東北大、地球初期のタンパク質生成の謎解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 「初期の地球でどのようにアミノ酸がつながってタンパク質が生成したのか?」は生命の起源解明に向けて明らかにすべき大きな謎の一つとなっている。

 タンパク質は生体反応を触媒する酵素として働き、生命に不可欠な高分子だが、その一方で、生命にはDNAとリボ核酸(RNA)と呼ばれる遺伝の役割を担う核酸も不可欠であり、それらの機能を持つ高分子が生命誕生前の地球でどのように生成したかは、生命の起源を知る上で大きな謎となっている。
 
 従来の研究では、核酸が不安定となるアルカリ性の蒸発環境ではアミノ酸が繋がりやすく、模擬実験において最長で20分子のアミノ酸が繋がったペプチドが生成することが報告されていた。一方で、核酸が安定となる中性環境ではアミノ酸がほとんどつながらないことも知られていた。

 東北大学大学院 理学研究科の古川善博准教授の研究グループは12日、RNA材料分子の生成を促進することが知られるホウ酸に着目し、ホウ酸がアミノ酸の重合反応にどのような影響を与えるのかの研究を行った結果、中性と酸性の蒸発環境でホウ酸がアミノ酸の重合反応を触媒し、中性では最も単純なアミノ酸であるグリシンが39分子結合したポリペプチドが生成することを明らかにしたと発表した。
 
 この研究結果は、生命誕生前の地球の沿岸域でタンパク質が生成し、同じ場所で生成した可能性のある核酸と相互作用して、生命へと化学的に進化していった可能性を示している。

 この研究成果は、5月8日に化学分野の学術誌「Communications Chemistry」に発表された。

ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press0512_01web_protein.pdf