2023年06月08日
九大、生物の突然変異 発生メカニズム解明に迫る
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 地球上の生物多様性を生み出す原動力は、生物がもつDNA塩基配列に生じる突然変異だが、自然環境下での突然変異の発生メカニズムはこれまで謎だった。

 九州大学大学院 理学研究院の佐竹暁子教授らの研究グループは、赤道直下のボルネオ島に生息する樹齢300年を超えるフタバガキ科Shorea属2種を対象に、新規にゲノムを解読し、長い年月をかけて蓄積した体細胞変異を検出することに成功した。
 
 成長速度の異なる2種の樹木を用い、成長の遅いS.laevisと、成長の早いS.leprosulaを対象に体細胞変異の分析を進めた結果、いずれの種も枝の伸長とともに体細胞変異の数は直線的な増加を示した。
 
 枝が1m伸びる際に生じる体細胞突然変異率を推定した。成長が遅いS.laevisは、成長の早いS.leprosulaよりも3.7倍高い変異率が見られた。しかし、年あたりに生じる突然変異率は、成長速度に依存せず種間で一定だった。
 
 これは、体細胞突然変異が枝の伸長に伴う細胞分裂ではなく、絶対時間に依存して蓄積することを示唆している。今後、遺伝的多様性をもたらす突然変異のメカニズムの理解を深めることで、熱帯の生物多様性の保全に貢献できると期待される。同研究成果は6月6日付の科学雑誌「eLife」に公開された。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/53050/23_0607_01.pdf