2023年06月16日
「標高9000ⅿの大気環境下でハチドリ飛行観察」
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東北大学

 昆虫・鳥・コウモリなどの飛翔生物は、巧みな翼の羽ばたき運動と時には胴体や尾翼の動きを利用し優れた飛行を行う。なかでも、翼面上に形成される前縁渦が地上の飛翔生物の自重を支える空気力発生の共通メカニズムとして理解されている。しかし、高高度での生物飛翔のメカニズムの詳細は現在も明らかになっていない。

 信州大学繊維学部の青野光准教授をはじめ東北大学、九州大学、前橋工科大学などの研究グループは15日、東北大学流体科学研究所の火星大気風洞の減圧チャンバーを用いて高高度飛行を模擬した低密度環境を構築し、その環境下でハチドリ規範型羽ばたき翼型飛行ロボットの翼が発生する空気力と翼面形状の同時計測を行った。

 今回の計測により、飛行ロボットの翼の面積を地上のモデルに比べて大きくしゆっくり羽ばたくことにより、大きな羽ばたき振幅と飛翔生物の翼の回転角変化に近い受動的な回転角変化を得られることを示した。この結果、大気密度が地上と比べて約3分の1の低大気密度環境下においても地上での空気力発生機構による大きな揚力の発生を実現させ、羽ばたき翼型飛行ロボットの世界初のリフトオフ実験に成功した。
 
 本結果は、羽ばたき翼特有の空気力学的メカニズムの活用による低密度・高高度環境下での飛行の実現可能性を示すものとなり、生物の高高度飛行メカニズムの理解と更に低密度となる火星大気環境などでの羽ばたき翼型飛行ロボットの飛行実現に繋がる重要な研究成果と言える。
 なお、同成果は6月2日付「Scientific Reports」電子版に掲載された。
 
(詳細)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press0615_04web_9000.pdf