2023年07月05日
北大、1900万年前の地層から「オベチェの森」発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学理学研究院の山田敏弘教授らの研究グループは4日、岐阜県美濃加茂市の木曽川河床に露出する約1900万年前の地層中に見られる約130本の化石樹幹を調査し、それらがすべてオベチェ(アオイ科)の仲間の絶滅種ワタリア(Wataria parvipora)であることを発見したと発表した。この発見は地球温暖化後の植生変化を予想する上で重要な手がかりとなる。

 また、この化石林の林床には1種類の葉ウリノキモドキが降り積もっていた。つまり、この化石林は純林であり、化石樹幹と葉化石が同じ樹木に由来することを示していた。

 落葉した植物の器官は化石になる前に互いに別れる。そのため、植物全体が化石として保存されることは稀で、特に大きな樹木全体が化石として見つかることは滅多にない。
 
 一方、化石を含む植物の類縁を推定するためには、様々な器官の特徴を総合的に観察することが必要だ。ウリノキモドキは約1900-1000万年前の北半球に普遍的に見られるが、その類縁は分かっていなかった。今回、幹と葉が繋がったことにより、ウリノキモドキがオベチェの仲間であることが初めて明らかとなった。

 現生のオベチェは、アフリカ中央部だけに分布する熱帯性の高木だが、これが見つかった時代は、地球の平均気温が最大で4°C上昇した温暖期にあたる。今回の発見により、この温暖期には高い気温を好む樹木が世界中に拡大していたことが示された。一方、この温暖期の後には、急速に寒冷化が進行する。ウリノキモドキはついに寒さに耐えきれなくなり、約650万年前に絶滅した。
 
 このような植生史は、植物が温度変化に合わせて分布を変えることを示す一方、ある程度の環境変化に耐える強かさを持っていることを暗示している。
 本研究成果は、2023年6月22日公開の「Scientific Reports」誌に掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/07/1900.html