2023年07月05日
京大,「採水」で海の魚の種間関係を推定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 近年、生物モニタリングにおいて、環境中に残存するDNA(環境DNA)を分析し、そこに存在する生物を網羅的に検出する「環境DNA分析」の利用が広がっている。しかし、これまでの環境DNA研究はほとんどの場合、ある種や系統がいる・いない、といった情報を引き出すまでにとどまっている。

 京都大学 白眉センターの潮雅之特定准教授らの研究グループはこのほど、千葉県房総半島沿岸から得た魚類環境DNAの高頻度時系列データを解析し、魚種間の関係性を検出できることを明らかにした。

 これによって、従来困難だった「野外環境下での生物間相互作用の網羅的モニタリング」を可能にできる。生態系の動態には生物間相互作用が大きな影響を与えている。(例えば、アイゴが海藻を食べ尽くし、隠れ家を失った小魚たちが姿を消す、など)。今回の研究成果はより正確な生態系の状態把握や近未来予測に繋がると期待される。
 本研究成果は、2023年4月25日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆環境 DNA :環境中、たとえば水や土の中に残存する生物由来の DNA の総称。環境 DNA の配列を分析することで、その環境中に生息している生物を検出できる。従来は微生物の検出に用いられることが多かったが、近年、魚類など水生生物の分布調査への利用が拡大している。