2023年07月10日
北大、氷の結晶成長過程を分子レベルで再現
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 低温科学研究所の村田憲一郎助教らの研究グループは、大規模分子動力学シミュレーションを用いて、過冷却水中の水分子が氷結晶に取り込まれ、氷結晶が成長する様子を一分子スケールで再現し、氷結晶の界面構造と結晶成長ダイナミクスが密接に関係していることを発見したと発表した。

 氷の結晶成長の研究はこれまでも数多く行われてきたが、成長時の一分子レベルの素過程については十分に理解されていなかった。研究グループは、氷のローカルな構造的特徴を抽出できる秩序パラメータを用いて氷の成長界面とその構造を同定し、氷の結晶成長が一分子層ずつ秩序を作りながらミルフィーユ状に進行することを見出した。
 
 また、液体側の水分子の拡散ダイナミクスは界面の近傍で数分子層にわたり低下していること、界面と接する最表層の水の密度が氷よりさらに低い状態になっていることも発見した。

 今回の研究成果は、水から氷への成長という最も身近な結晶成長ダイナミクスを分子レベルで理解するための枠組みを与えると同時に、細胞・臓器等の冷凍保存で鍵を握る氷晶成長制御や、類似の結晶成長様式を示すシリコンなどの半導体結晶の育成に向けた新たな指針となることが期待される。
なお、同研究成果は5月19日公開の「Communications Materials」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆秩序パラメータ  : ある分子周辺の秩序を測る指標。綺麗に並んでいれば大きく、乱雑であれば小さくなる。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230707_pr3.pdf