2023年07月11日
北大、T細胞を標的とした新阻害剤を開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 薬学研究院の松田正教授らの研究グループは10日、アダプター分子であるSTAP-2を標的とした新たなT細胞阻害剤を開発し、自己免疫疾患の病態を抑制する作用があることを見出したと発表した。

 通常、ヒトの体内に病原体が侵入した場合、免疫担当細胞が担う生体防御反応により排除される。この反応にはT細胞が主要な役割を果たしており、T細胞の機能はT細胞受容体( TCR )下流の信号伝達機構により、厳密に制御されている。T細胞異常活性化は自己免疫疾患の発症や重症化の原因であることから、TCRを介した信号伝達機構の解明及び制御が、免疫疾患を制御するためには重要となる。

 研究グループは以前、その信号伝達にはSTAP-2が重要な役割を果たすことを解明し、その働きを強めることにより、T細胞活性化を促進することを見出した。今回その発見を応用し、T細胞の機能を抑制するコンセプトのもと本阻害ペプチドを開発した。その阻害ペプチドによってT細胞の機能が実際に抑制され、自己免疫疾患の病態も軽減された。本阻害ペプチドをさらに最適化し、臨床への応用を進めることで、自己免疫疾患の新たな治療薬の開発が期待できる。

なお、本研究成果は、雑誌「The Journal of Immunology」7月7日にオンライン公開された。