2023年07月12日
京大、ショウジョウバエの遺伝子発現アトラス作成
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学生命科学研究科の近藤武史特定講師らの研究グループは11日、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)原腸胚を構成する各細胞における全遺伝子の発現を定量解析し、高解像度の空間情報を含む1細胞遺伝子発現アトラスを構築したと発表した。

 動物のゲノムには数万の遺伝子がコードされている。この数万の遺伝子が複雑に絡み合いながら協調して働くことによって、複雑な発生現象が正確に進行されていると考えられている。しかし、遺伝子が時空間的に協調して発生を制御する仕組み・ルールはまだ理解されていない。その理由の一つとして、発生中の胚における細胞単位での定量的な遺伝子発現情報が不足していることが挙げられている。

 キイロショウジョウバエ原腸胚はまさに細胞分化とダイナミックな形態形成が進行している発生段階であり、本研究で構築した1細胞遺伝子発現アトラスは、ゲノム情報による発生制御の仕組みのさらなる理解に貢献すると期待される。
 同研究成果は、2023年7月10日に、国際学術誌「Cell Reports」に掲載された。
  
<用語の解説>
◆トランスクリプトーム :細胞がゲノムにコードされる遺伝情報を利用する際には転写によって RNA へと変換される必要がある。この転写によって作られる RNA の全体的なパターンや量の総体をトランスクリプトームという。ある個体においてゲノムは細胞間で基本的に同一であるが、トランスクリプトームは細胞の種類や環境によって異なっており、それが細胞の機能や特性の違いの基盤になっている。また、細胞内の全 RNA を網羅的に解析する手法をトランスクリプトーム解析という

ニュースリリース
 https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-07/2306_Kondo_CellReport_relj8-262d2ad9852b09aac768908188fd71d1.pdf