2023年07月13日
茨城大など、リュウグウの炭酸塩から酸素濃度解読
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東京大学

 茨城大学理学部の藤谷渉准教授をはじめ、北海道大学、東京工業大学、東京大学らの研究チームはこのほど、宇宙探査機「はやぶさ 2 」が回収した小惑星リュウグウの試料を分析し、リュウグウにおける酸素濃度や存在するガス分子種の変遷を明らかにしたと発表した。
 リュウグウの試料の炭酸塩粒子に対して、酸素・炭素の両方の分析を初めて網羅的に行った。
 
 研究チームは、リュウグウの試料における炭酸塩鉱物(方解石および苦灰石)に含まれる、炭素と酸素の同位体の存在量比を調べた。すると、方解石では炭素・酸素どちらの同位体比も異なる粒子の間で大きな変動がある一方、苦灰石ではほとんど変動は見られなかった。
 
 この分析結果は、方解石はリュウグウにおける変質作用の初期、温度や酸素濃度が上昇中、ガス分子種の割合が変化しているときに形成され、一方、苦灰石は系が平衡状態にあり、より高温で、ガスの中で二酸化炭素の割合が相対的に高い状態で形成されたことを示唆している。

 こうした炭酸塩鉱物の同位体組成は、これまでの隕石研究では報告されていなかった。このことから、リュウグウや隕石の母天体はそれぞれ異なる物質から構成され、独特の環境で進化したと言える。
同成果は、2023 年7 月10 日付「 Nature Geoscience 」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆母天体とは :隕石などの起源天体(多くは小惑星)のことを母天体と呼ぶ。リュウグウは小惑星だが、その密度や空隙率から、より大きな天体が破砕した岩片が再集積して形成したと考えられており、ここではその元の天体のことを母天体と呼ぶ。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230711_pr.pdf