2023年08月18日
北大、太陽光をもれなく利用可能な新材料開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学工学研究院の渡辺精一教授らの研究グループはこのほど、水と光のみを用いた水中結晶光合成(SPsC)という新たに開発した手法により、銅と酸素の空孔を戦略的に添加ドーピングすることでタングステン酸(WO3・H2O)を用いた光学的臨界相を誘導できることが明らかになったと発表した。

 光応答性ナノ粒子を均一に分散させた材料は、太陽電池、光触媒など太陽光を念頭に置いた持続可能なエネルギー利用やフォトニクスの応用に役立つ。しかし、従来方法では紫外線と可視光までを利用するだけのため、太陽光の約40%以上を占める赤外域の光は未利用だった。

 これらの光学的臨界相を有するナノ材料は、光波長0.8~2.5マイクロメートルの赤外領域を含む全太陽光波長域での応答を促進するため、これまでに前例のない優れた光熱変換特性を示し、太陽光水蒸発や光電気化学の高効率特性が現れることが明らかになった。

 今回開発したSPsC材料は、近い将来、全太陽エネルギーを利用するための高効率先端酸化物材料の設計と材料デバイス開発に貢献するものと思われる。
 同研究成果は7月29日公開の「Advanced Materials」誌にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230807_pr2.pdf

<用語の解説>
◆ 水中結晶光合成 とは : 光と水を用いて水中でナノ結晶を合成する技術のこと。水中におけるナノ粒子合成効果を利用すれば、材料内への元素添加酸化物ナノ粒子の生成も可能となる。