2023年08月23日
東北大など、免疫細胞の炎症制御「硫黄代謝」がカギ
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 マクロファージは免疫細胞の一種であり、病原体の感染や周りの細胞の損傷等により活性化し、病原体の排除や組織の修復を行う。しかし、過剰に活性化すると新型コロナ感染症で見られるような重症肺炎などの原因となるほか、炎症が長引くと慢性閉塞性肺疾患などの慢性炎症性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患ほか、さまざまな病気を引き起こす。

 私たち人が持っている細胞は本来、炎症反応を収束させ、過剰な炎症反応が起こることを防ぐメカニズムを兼ね備えているが、マクロファージは、その制御に関わる因子の全貌が明らかにされていなかった。

 東北大学加齢医学研究所の本橋ほづみ教授らの研究グループは22日、マクロファージによる炎症反応の収束には「硫黄代謝」の活性化がカギとなることを明らかにしたと発表した。
 
 同研究で、マクロファージが取り込んだシスチンとその還元型であるシステインを基質として超硫黄分子が合成され、過剰な炎症応答を収束させるネガティブフィードバック機構が形成されることを明らかにした。

■発表のポイント
(1) 炎症を制御する細胞であるマクロファージにおいて、炎症の終結に必要な代謝パスウェイを同定した。
(2)炎症刺激により活性化したマクロファージは、含硫アミノ酸であるシスチンを細胞外から取り込み、超硫黄分子を産生することで、炎症反応を終結させることを明らかにした。

 本研究成果は、マクロファージが本来持っている超硫黄分子による炎症抑制機構を強化することが、重症感染症や慢性炎症、自己免疫疾患などの創薬標的となる可能性を示唆している。
 同研究は熊本大学、九州大学、新潟大学と共同で行われた。
 本成果は、8月1日に欧州の学術誌「Redox Biology 」誌に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20230822_02web_macrophage.pdf