2023年10月02日
海洋研究機構「黄砂は海の生態系に重要な役割」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 国立研究開発法人 海洋研究開発機構( JAMSTEC )の地球表層システム研究センターはこのほど、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠で発生する黄砂が、海洋の生態系を育くむ役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。海水中に僅かに含まれる石英粒子から海洋への黄砂沈着フラックスを推定した。
 
 研究グループは、現在進行中のさまざまな環境変化が海洋生態系に与える影響を調べるため、北海道大学、広島大学、九州大学と共同で、2005年から観測点 K2(北緯 47度、東経 160度)を中心とした西部北太平洋亜寒帯域で大気・海洋観測を実施中だ。
 
 今回、海洋に沈着する黄砂のフラックスを定量的に評価する分析手法を新たに開発し、海洋への黄砂沈着フラックスとその季節性の解明に成功した。

 研究グループはさらに、黄砂が海洋へと沈着した際に、一部の鉱物粒子から海水へと溶け出す“鉄”の量が、西部北太平洋亜寒帯域の海洋の基礎生産に影響を与えるほど多いかを調べた。海洋への黄砂沈着フラックスを基に、黄砂が当海域の表層に供給する溶存鉄の量を計算した。
 
 これらの結果、“大気を介した溶存鉄供給”の総量は、海洋中層からの溶存鉄供給を含めた全体の鉄供給の4割程度を担っていることなどが明らかとなった。今後も陸と大気と海をつなぐ黄砂の挙動を丹念に調べ、気候変動解明の一環として役立てていく方針だ。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231002_pr.pdf