2023年10月10日
北大、体温と病原性細菌の生存性 関連調査
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 保健科学研究院の山口博之教授らの研究グループはこのほど、適度な湿度下では乾燥した高頻度接触面(人がよく触れる場所)を人肌に温めるだけで病原細菌の生存性が著しく低下することを発見したと発表した。

人々はふだん生活の中に、多剤耐性菌等の病原体を持ち込み、拡散させている。そのため、耐性菌の伝播循環を未然に防ぐための研究は活発だが、消毒剤等の予防研究が主流で、拡散制御の決め手にはなっていなかった。

 研究グループは、これまでの観察から、これら耐性菌も人と同じ生命体であり、殺滅し取り除くのではなく、普遍的な環境因子の調節によって、折り合いをつけられないかと考えた。

 その結果、湿度が低く相対的に温度も低い環境では、そうでない環境に比べ高頻度接触面の細菌数が有意に高いことを発見した。また実験的に人肌(37℃)に温めた手すり上では、大腸菌やブドウ球菌等、ヒトに感染症を引き起こすリスクのある病原体の生存性が有意に低下することを発見した。さらに、それに付随するメカニズムとしてNhaAというナトリウムとプロトンの交換輸送体が乾燥面での大腸菌の生存性を規定する因子の一つであることを突き止めた。

 この結果として今後、乾燥面の病原体を制御するための化学物質に代わる、全く新しい概念に基づく感染制御法の開発が期待される。なお、同研究成果は「PLOS ONE」(9月20日)にオンライン掲載された。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/10/post-1326.html