2023年10月17日
北大、寄生虫エキノコックスはどこから来たか
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学 獣医学研究院の中野成晃教授ら研究グループは16日、北海道のエキノコックス(多包条虫)の起源に関する仮説を遺伝学的に検証したと発表した。

 エキノコックスはヒトに感染して重篤な疾患を起こす寄生虫で、現在道内に広く分布しているが、本来は外来種とされている。20世紀のはじめ、千島列島では毛皮目的のキツネの飼養が盛んに行われ餌となるネズミも飼育されていた。
 
 一つの仮説として、これら人為的な宿主動物の移動に伴い、アラスカのセントローレンス島起源の寄生虫が千島列島を経て北海道本島に侵入したと考えられてきた。しかしこうした仮説は新聞や公的文書などの記録から得られた推測に過ぎず、寄生虫の起源に関する科学的知見は得られていなかった

 研究グループは、国内外のエキノコックスが持つ遺伝的情報(ミトコンドリアゲノム)を解析することで仮説と一致して北海道のエキノコックスはセントローレンス島に起源をもつ可能性を明らかにした。さらに北海道東部には中国四川省の寄生虫と近縁な集団が存在することをつかんだ。

 グローバル化が進む中、世界規模でペットの移動や不法な輸出入など人為的活動によるエキノコックスの流行地から非流行地への拡散が危惧されており、国内でも北海道から本州への拡散リスクが指摘されている。同研究成果は、新たなエキノコックス症の流行拡大の監視・防止に貢献する知見として重要となる。
なお、同研究成果は、2023年8月25日公開のi「Science」誌に掲載された。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231016_pr3.pdf