2023年12月14日
東北大、AI処理を高速・超低電力化、新技術開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東北大学

 人工知能(AI)やデジタル社会の進展に伴い、コンピュータで処理するタスクは複雑かつ多様化している。このため、各用途に特化した新概念コンピュータの研究開発が進んでいる。
 スピントロニクス確率論的(「P」)コンピュータは、確率性を伴う複雑な問題を省電力で超高速に処理できると期待される新概念コンピュータの一種。
 
 東北大学と米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校のチームは以前から共同研究を行い、昨年実験結果に基づき汎用的なコンピュータと比べて演算速度を約5桁向上、消費電力を約1桁低減できることを示していた。一方で昨今急成長するAI技術への応用に向けては、現行AIの大部分が採用する計算方式である順伝播型ニューラルネットワークに整合した技術の開発が求められていた。

 今回、研究チームはスピントロニクスPコンピュータで順伝播型ニューラルネットワークに基づく計算を行うための新技術を開発し、行動履歴や生活習慣と病気の発症の因果関係を確率的に解析するAI計算のデモ実験などに成功した。また、これまでのPコンピュータの動作速度を3桁向上する新素子技術を開発した。

 同研究で現行AIと高い整合性を有した技術が確立されたことから、今後社会実装に向けた研究開発が一層進展すると期待される。同成果は、先に米サンフランシスコで開催された学術会議「IEDM」で発表された。

<用語解説>
◆ スピントロニクス :電子の持つ電気的性質(電荷)と磁気的性質(スピン)を同時に利用することで発現する物理現象を明らかにし、工学的に利用することを目指す学術分野。例えば従来は不可能であった磁気的性質や磁化方向の電気的な検出や制御(スピントルク磁化反転)、電気伝導特性の磁場や磁化による制御(磁気抵抗効果)などが可能となり、現在も様々な現象が発見され続けている。
 
ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/12/press20231213-02-ai.html